輝くあの女性のように 第19回

和食たかなし 洪 英(コウ エイ)さん

中国から松山へ移り住み20年以上。和食の職人であるご主人とともに「和食たかなし」を切り盛りする洪さん。日本にきた理由やこれまでのストーリー、自営業ならではのワーク・ライフ・バランスの取り方など、じっくりうかがいました。

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洪さんのヒストリー

1971年 中国ハルビン市生まれ
1998年 中国の大学を卒業後、愛媛大学大学院に留学
2000年 松山市内の民間企業に就職
2007年 退職
2008年 結婚
2009年 長女出産
2011年 次女出産
2012年 松山大学国際センター課に勤務
2015年 愛媛大学 事務職として勤務
2017年 和食たかなし 開業

日本に来られたきっかけを教えてください。

私は中国のハルビンで生まれ育ちました。北部に位置する町で、日本でいえば北海道のような場所。結構寒いところです。もともと日本の文化に関心があったので、中国の大学を卒業後、愛媛大学の大学院に留学して2年間学びました。
卒業後は帰国する予定でしたが、日本でも働いてみたいと思い、民間企業に就職しました。雑貨やベビー用品を取り扱う会社で、貿易部に配属されたので語学力を生かせる職場でした。そこで6年半くらい勤めたのですが、その間に夫と出会って2008年に結婚し、その翌年に長女が生まれました。

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育児中はお仕事をお休みされていたのですか?

出産後は育児をしながら語学力を活かす仕事など、フリーで活動していました。家事や育児をメインとして、無理のない範囲で仕事をしながら本格的な社会復帰を目指しました。
次女が生まれて1年が経った頃から、今までの仕事の経験を活かして大学の事務の仕事をしました。

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ご主人の独立開業を機に女将となったわけですが、迷いはなかったですか?

それはなかったですね。自分が女将としてやっていかなければと思いました。大阪で和食の修業を重ね、松山に帰ってからも和食店などで経験を積んできた夫にとって、独立は目標でしたから。
ただ、私は飲食業の経験がなかったので、最初の3ヶ月はキツかったですね。立ち仕事にも慣れていなかったので、40代での新しい挑戦は思った以上にしんどかったかな(笑)。自営業って自分でオンとオフを切り替えないと、ずっと頭の中で仕事しちゃうんですよね。定休日も買い出しや事務的な仕事などがあるので、メリハリをつけることが難しかったです。

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お忙しい中で、どのように子育てを両立しているのですか?

お昼の営業が終わると一度帰宅して、夜の営業までに子どもたちの夕飯を作る時間をとっています。そして、なるべく子どもたちと夕ご飯を一緒に食べながら、話しを聞くようにしています。
開業して4年目に入り、子どもたちも私たちの仕事のリズムが分かってきていて、自分たちでやれることは少しずつ覚えていくようになりました。家族みんなで力を合わせてお店を続けていくことにしています。

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日本での出産・育児は大変ではなかったですか?

私はあまり物事を気にしないタイプですが、文化の違いなどで失敗したことは結構ありますね。でも、うちはお姉ちゃんがとてもしっかり者で、わからないことは逆に教えてくれるんです。長女で失敗したことは加減がわかるので、次女のときは間違えないようにと。だから次女にとってお姉ちゃんは絶対的存在。お姉ちゃんの言うことが全て、お姉ちゃんの読む本は真似して読むし、お姉ちゃんの趣味にも付き合うし、何が好きかも全部知りたいみたい(笑)。お姉ちゃんとだったら安心というのがあって、夜も二人だけで過ごしてくれているので、親としてはとてもありがたいです。

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ご家族4人が揃うことがなかなか難しいのですね。

そうですね。私は毎日子どものご飯の支度をしに帰るのですが、夫はそれも難しく、一緒に夕飯を食べられるのは定休日の水曜だけ。なので、水曜日は子どもたちがとっても興奮しています。よっぽど嬉しいみたいで、すごく甘えてきますね。
以前、休みの日に家族で出かけても、結局二人で仕事の話ばかりしてしまっていて、子どもたちに「仕事が大事なの?私たちが大事なの?」と言われて気づかされました。それからは、子どもたちと一緒にいるときは仕事の話は禁止にしています。やっぱりオンとオフの切り替えは大切ですね。

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今後のビジョンを教えてください。

健康的に無理せず、長くお店を続けていけたらなと思っています。オープンして1〜2年は試行錯誤しながらの日々でしたが、3年が経ち、最近になって少しずつスタイルができてきたかなと。むしろコロナ禍を経験したからこそ、お客様との会話も増え、心の距離がもっと近くなったような気がしますね。こんなときでも来てくださるお客様、応援してくださるお客様のありがたさを実感しています。
私たちの理想は、利益追求ではなく、お客様が満足して帰られることが一番。お料理を楽しみに来てくださり、満足して帰っていただけるように。これからも夫とともに、質の良いお料理とサービスをご提供するための努力を続けていきたいです。

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タイムスケジュール

6:50 起床
朝食
9:00 お店でデスクワーク、開店準備
11:30 ランチ営業
ホールの仕事
15:00 帰宅
夕飯の準備と夜営業の準備作業
17:30 夜営業
ホールの仕事
24:00 帰宅
1:00 就寝

【好きなモノ、こと】

【好きなモノ、こと】

これから「ハタラク」あなたに、洪さんからのメッセージ

あまり気張らず、休みながら働きましょう。これを一番に伝えたいですね。私もお店がオープンしたばかりの頃は、毎日がむしゃらに働きすぎてキャパオーバーになって体調を崩し、子どもたちにも心配をかけてしまいました。仕事が忙しくなると体調にも影響が出てしまう。ですから、仕事も家事もほどほどに。特に自営業になると自分でタイムマネジメントをしなければならないので、一度スケジュールを洗い出してみるのもいいかなと思います。私も今回の取材を機に、1日のタイムスケジュールを一週間洗い出してみました。この時間はもう少し有効に使えるなとか、無駄な時間に気づくこともできて、時間の使い方を見つめ直すいい機会になりました。

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心も体も穏やかに。旬を感じる和食でおもてなし

和食たかなし

愛媛県松山市道後一万3-19 ブール・ド・ネイジュ 1F
電話番号/089-924-9798
営業時間/11:30〜14:00(LO 13:30)※日曜・祝日は休み、17:30〜23:00(LO 22:30)
定休日/水曜
詳細はHPをCheck!
和食業界で長年修業した大将が、丹精込めて作り上げる本格的な料理の数々。四季折々の彩りを込めた体にやさしい一品一品を、美酒とともに。