輝くあの女性のように 第8回

Lemon Salt(レモンソルト) オーナー 坂和栄子さん

松山市でカフェ「Lemon Salt」(レモンソルト)を営む坂和さん。関西から島根、広島、そして故郷松山へ。料理人として、それぞれの場所で一生懸命、仕事と向き合ってきた彼女の過去、現在、未来。振り返ってみて改めて「いま、思うこと」をお聞きしました。

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坂和さんのヒストリー

1967年 愛媛県松山市生まれ
1989年 大学卒業後、OLとして会社勤めを経験。
1996年 島根県のハーブ園で食に目覚め、料理の道へ。その後、広島に移り、飲食店の厨房で調理スタッフとして働く。
2002年 結婚、長男を出産。
2014年 長男の学業を優先させるため、帰郷。松山市にLemon Saltを開業。

食に目覚めたきっかけは?

京都で大学時代を過ごし、卒業後は関西で会社勤めをしていたのですが、都会での慌ただしい生活に疲れてしまって。ストレスもかなり溜まっていたんでしょうね。元々が松山生まれでのんびりと育ったので、自然の中で生活したいという思いが募っていったんです。そこで、思い切って退職し、たまたま目にした島根県のハーブ園での栽培研修の応募に飛びつきました。それがもう20年ほど前。ハーブ園では1年間栽培について研修し、仲間と寝起きを共にしました。女性6名の共同生活で、最初はみんなで自炊していたのですが、「とてもおいしい!お店みたい!」と持ち上げられて(笑)。いつの間にか私が料理担当になっていました。
この時感じた「おいしい」と言ってもらえることの喜びが、料理の道へ進んだきっかけでしたね。目の前にハーブもあるので、そのハーブを使っていろんな料理にチャレンジしたり。食への関心はどんどん高まっていきました。

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その当時から、いつか自分のお店を持とうと思っていたのですか?

それはなかったです。島根での研修生活を終えると、縁あって広島県に移り、フレンチやイタリアンのシェフのもとで調理のアルバイトをさせていただいていました。とにかく料理の世界に携わっていることがとても楽しく、やりがいを感じている時期でした。
その後、料理関係の仕事をしている人と結婚し、出産。しかし、意見の食い違いなどもあり離婚しました。そこで初めて、自分でお店をしなきゃと思ったんです。とにかく子どもを何とかして育てなきゃいけない。だけど、田舎なのでなかなか働き口がない。ジャム工場のフルタイムパートに出ていた時期もありましたが、朝から晩まで子どもを保育園に預けなきゃいけないので、一緒に過ごせる時間はわずかになってしまう。子どもを育てながら「おかえり」と言える環境。それが自分で店を持つことでした。その後、出会いに恵まれ、広島の山奥で店を開くことができたんです。

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松山にUターンしたきっかけは?

店は民宿の離れの建物なので、私は店でのランチ営業だけでなく、宿泊客の朝食、夕食も担当していました。朝は4時から仕込みをはじめ、朝食の仕事を終えたら買い出しをして、昼はランチ営業、夜は夕食の提供。毎日クタクタになるまで働き、残りものを子どもに食べさせて、という生活が4年続きました。そして小学5年になり、そろそろ中学校を考えなきゃというとき、中学・高校が地区になく、下宿でもして進学しないといけない環境ということに気づいて途方にくれました。それで、松山に帰ることを決めたんです。両親がこの場所を見つけてくれて、運良く貸していただくことができ、自分たちで内装などをして、2014年4月に開業しました。
前の場所に比べ、松山はとにかく便利!買い物に行くにも、病院に行くにも。子どもは元々ゲームが好きで、コンビニにも行きたがっていたから、すぐにこちらでの生活に順応しました。でも小さいうちはあまりそういうものに関わって欲しくなかったので、小学校までは何もない田舎でのびのび育ってくれて良かったなと思います。

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お店を営業していく上で、心がけていることはありますか?

食べ物はもちろんですが、“五感で癒やされたなぁ”と少しでも思ってもらえたら、とは思っています。店内の壁面に飾っている絵画でも、空間でも、「ここの コーヒーおいしいな」でも。何か一つでもいいから、「癒やされたな」というのがあればうれしいですね。
料理の面では、食で元気になれるように、安心して食べられるおいしいごはんをつくっていきたい。子どもが小さい頃、ぜんそくとアレルギー体質だったので、食べ物で治したいという気持ちがありマクロビオティックを学びました。ただ、ストイックになりすぎず、自分がいいと思った部分を取り入れるようにしています。例えばマクロビでは肉や魚はNGですが、うちでは肉、魚も野菜とともにバランス良く摂れる献立を調えています。
また、基本となる調味料「塩レモン」のレモンは、中島で栽培されているもの。無農薬に近いので、皮まで安心して使うことができるんですよ。うちの愛犬の名前が「レモン」なので、レモンを使った調味料いいなぁと思って(笑)。

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坂和さんの「これから」についてお聞かせください。

変わっていくことを拒んではいないので、カタチはどんどん変化していくと思っています。「この店を絶対守る!」とは思っていませんし。だけど、芯となる思いは、誰かの癒やしになったらいいなということ。今は子どもの学業中心なのでお店は街中ですが、本当はもうちょっと自然の中で、大好きなワインが飲めるお店をしたいですね。自然がいっぱいで、お庭があって…。ゆくゆくは、田舎で自分も癒やされながらお店をするのが夢です。でも、今は完全に子ども中心。店主としてはお店中心でいなきゃいけないのでしょうけど、お店をはじめたきっかけが「子どもと少しでも長く一緒にいられること」だったので、手が離れるまでは一番に考えてあげたい。それが責任というか、人ひとりを育てるのだからしっかり向き合わないといけないと感じています。だから、もうしばらくは子どもを中心に、今のスタイルでやっていきたいと思っています。

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タイムスケジュール

6:00 起床
洗濯や掃除、犬の散歩、朝食など。
8:30 出勤
仕入れや仕込みなど、開店の準備
11:00〜17:00 お店の営業
店がオープンすると、調理、接客などお店での業務全般をこなす。ランチタイムはスタッフさんがいるが、それ以外の時間は基本的に一人で店を切り盛りしている。
17:00~18:00 買い出し
店を閉めた後、明日のための買い出しなどをする。
18:00~19:00 帰宅、夕食
息子さんとともに夕食。その日あったことを話す大事なコミュニケーションの時間でもある。
19:00~21:00 自由時間
夕食の片づけを終えたら、束の間の休息。息子さんが通っている剣道の稽古がある日は送迎をする場合も。
21:00~23:00 翌日の準備
ゆっくりお風呂に入り、明日の準備などを済ませておく。
23:00 就寝
愛犬・レモンくんとの時間がリフレッシュに。「本当にリフレッシュ方法が少なくて(笑)。気心の知れた友人と集まってワインを飲んでおいしいご飯を食べるのも楽しみかなぁ」
絵画など美術作品を鑑賞するのが好きという坂和さん。店内をギャラリースペースとして開放している。

これから「ハタラク」あなたに、坂和さんからのメッセージ

生かされている以上、生涯、誰かの役に立つこと、喜んでもらえる仕事を続けられたら、それはとても幸せなことだと身をもって感じています。誰かのためになっていると思えたら、それが生きがいになり、ずっと元気でいられるんじゃないかなぁ。仕事も家事も育児もとなると、大変なことがいろいろあります。私自身、やりたいことはたくさんあるのに、うまく体がついていかず悩んだ時期もありました。そんな時は立ち止まることも大切。案外、なんとかなるものです。頑なに執着していたら本当にしんどいので、みんなが良くなるなら、こだわらず変わっていくのもいいかなって。大きな波に乗っていると思って、人生の変化もゆったりと受け止めていければいいんじゃないかなと思います。

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安心しておいしく食べられる
体にやさしいごはんとスイーツを手づくりしています。

Lemon Salt(レモンソルト)

〒790-0802 愛媛県松山市喜与町1-6 1F
TEL:089-913-7577
営業時間/11:00〜17:00 定休日/日曜、祝日